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ORC と盗難に打ち勝つ:「安全な小売」のための戦略
小売店を狙った犯罪の増加と猛威は、世界的な問題となっています。APAC など一部の地域では、この傾向に打ち勝つことに成功していますが、その他のほぼ全ての地域では、日に日にエスカレートする店舗の安全を脅かす問題と闘っていく必要があります。
米国では小売店を狙った組織犯罪(ORC)が急速に増加しており、小売業者が立ち向かうべき新しい形の盗難がみられ始めています。このタイプの犯行は通常、組織犯罪集団と関係のある集団が、転売を目的に大量の商品を盗むというもので、わずか1年で 27% も増加しています。一方、小売店を狙った犯罪は、 オーストラリア や英国で増加しており、英国では 1日当たりのスタッフに対する暴力や虐待行為が 867 件という驚異的な水準に上っています。
地域にかかわらず、この急激に増加している新たな脅威に対応しなければ、利益が低下し、ブランドの評判に傷がつき、顧客体験が損なわれます。現在の小売環境に現実に合った、安全でセキュアな小売環境を形成するために、次の戦略をご検討ください。
増加の原因は何か?
パンデミックとコロナ後の新常態、そして現在の高インフレ環境など、世界的な盗難増加をもたらす様々な要因があります。
セルフレジの急速な普及は、買物客にとっては便利なサービスですが、残念ながら犯罪者にも利便性を与えてしまい、また万引きに対する 寛容な措置 も状況を一層悪化させています。
「出来心の犯罪や ORC グループは、責任追及を受けないことを知っているため、犯罪が減ることはありません」と、Sensormatic Solutions の Account Executive の Mathew Meade は言っています。「彼らは起訴されるないことを知っており、盗難によって得られる利益は大きい。」最近、大手スポーツ用品店の関係者と話した際に、従来のようにお客様が商品を自由に見て回れる形態から、「ベーカリー」のようにカウンターで直接オーダーしなければならない形態に切り替えることを検討している、と話してくれました。一部の市場では、状況はこれほど悪化しているのです。」
より安全な小売に向けたソリューション
それでは、顧客体験を損なうことなく、安全な販売環境を確保するために、小売店はどのようなソリューションを考慮する必要があるでしょうか?「これは、コントロールを取り戻すことから始まります」と、Sensormatic Solutions の Video Analytics、AI、& Incubation General Manager の Dustin Ares は述べています。
「まず、より優れた顧客体験を追求し、その上で労働者不足に対応します。小売業者は、自分たちを欺く犯罪者の行為を思い止まらせる様々な措置を緩和してきました。そして今、これらを再び導入したり、利用する必要があります。」
しかし小売店にとってこれは、単に小売環境のコントロールを取り戻すということだけではありません。善意の顧客に、当店は不審な行動者を抑制する措置を取っているのだ、と言うことをわかっていただける形で行う必要があります。これは、口で言うほど簡単なことではありません。
不審な行動者を抑止するための措置の多くは、善意のお客様にも異なる意味で抵抗感を与えます。ガラス越しに商品を閲覧できるようにすることで、万引きを軽減することはできますが、買物の活動も低下します。フリクションが多すぎれば、お客様はより円滑な購入体験を提供してくれる他の店で商品を探そうと思うかもしれません。
コントロールを取り戻す
コントロールを取り戻すには、まず抑止手段をより公然と設置する必要があります。例えば、設置する Public View Monitors の数を増やすことができます。店頭、セルフレジ、高リスク商品のディスプレイ領域に、カメラだけでなく、ライブビデオフィードの高解像度ディスプレイを設置することで、貴社が店舗の安全を真剣に受け止めている、という明確なメッセージを、お客様にも、万引き犯にも伝えることができます。
モニターは重要ですが、あくまで予備的な防御策にすぎません。それでも「対策の堅牢化」を図るのは、小売業者が「安全性」と「売上」との厄介なトレードオフに迫られたときです。 「小売業者にとって、ロック付きのケースなど、従来の方法を取り入れることが既定の選択とされていました。しかし、これでは売上が損なわれ、顧客体験に影響を及ぼします」と、Meade は言います。「しかし、ハードタグ、セーファーとラップ、 ラベルを、完全接続型の 電子式商品監視(EAS) 検出システムなどを使用することで、よりスマートに、お客様と利益にやさしい方法で、これを実現することができます。この方法では、顧客体験を損なうことなく、犯罪を抑止することができ、なおかつ損失イベントに関する貴重なデータを提供してくれます。」
在庫棚に ソースタグされた商品を補充することで、現在のスタッフの数にかかわらず、商品が確実に、一貫してタグ付けされた状態を維持することができます。製造元でタグ付けを行うことで、多忙なスタッフが注意しなければならないタスクの量を減らすことができます。現在小売業者が直面している労働者不足の問題を考慮しても、これは大きな利点であり、スタッフはより高い警戒心をもって監視できるようになります。
接続型 EAS システムで掘り下げる
EAS システムは、損失防止対策に確固とした基盤を提供しますが、それだけではありません。
接続型の EAS システム は、 サービスとしての損失管理(SMaaS)分析プラットフォームを使用して、商品がどこで、いつ盗難に遭っているかを明らかにし、この情報を損失防止対策に役立つデータに変えることができます。SMaaS は、各データポイントをつなげて、損失パターンのインサイトを生成し、潜在的な ORC の活動を明らかにして、次のターゲットを予測するために役立てることもできます。またこれは、ORC の活動が今後 7 日間にどこで発生するかについてのインサイトも生成することができるため、予防措置を講じることができます。
損失イベントについてより深く理解するために、RFID テクノロジーは損失を見える化し、より強力なインサイトを提供することができます。暗号化された RFID タグとラベルで、どの商品が、いつ盗まれたかについて商品レベルで情報を収集できるようなり、また複数の商品が一度に盗まれる大量の損失イベントなど、通常 ORC が発生した際に見られる兆候も特定できます。この新しいデータを利用することにより、小売業者は証拠ファイルを作成したり、取得した映像と統合させて、犯罪者を追求し、起訴に至るまで、法執行機関に協力できるようになります。
Computer Vision で損失防止プログラムをさらに強化
小売店を狙った犯罪、特に組織犯罪には、同様の組織的な対応が必要です。接続型 EAS システムは、犯罪者を抑止し、損失イベント発生後に強力な予防的分析を提供することができ、Computer Visionと使用することで、その効果を高めることができます。
単行本とほぼ同じサイズの小型のエッジデバイスで動作する Computer Vision は、既存のカメラインフラから入手したリアルタイムの映像と、最新の AI と機械学習を使い、疑わしい顧客の行動が発生するごとに検知して、リアルタイムの通知を提供できるようになります。この従来受動的でありながら、重要なセキュリティインフラの一部を有効にすることで、より広範な領域を、常に監視できるようになります。
Computer Vision Analytics は、小売特有のユースケースに対応するために開発されたもので、犯罪行為を監視することもできるため、小売業者は犯罪と盗難への防御体制を強化できます。例えば Computer Vision Analytics は、駐車禁止ゾーンの車両を検知し、集団が一度に来店した際に通知を送信し、シェルフスウィープの動きでさえも見逃しません。既存のカメラインフラを活用した比較的シンプルな方法で、新しいデータソースにアクセスして、損失や犯罪行為に関するインサイトを取得することができます。
「インテリジェンス技術を主力とした損失防止対策を実現するためには、一定の投資を行い、必要な接続を行わなければなりません」と、Ares は指摘します。「しかし、小売業者が予想するよりも少額の投資で実現できる場合があります。例えば多くの Computer Vision ソリューションは、ハードウェアを 1 つ購入するだけで、あとは既存のカメラインフラと使用して展開することができます。無理のない費用と展開のしやすさで、すぐにでも実行に移せるインサイトを入手できます。」
フリクションを形成して、商品を保護する
分析、AI、高度センサーなどは、損失防止の未来として位置付けられていますが、従来式の方法でも、一定の効果を得ることができます。例えば、潜在的な犯罪者に、彼らが監視されていることや、商品が物理的に保護されていることを明白に知らせることができます。セルフレジや試着室の入口付近など、不正による損失が多発する領域に Public View Monitors などのテクノロジーを設置することにより、ORC や出来心の犯罪者に、彼らの行動がカメラで捕らえられている、ということを伝えることができます。
同様に、セーファー、ラップ、ハードタグ、ラベルなどの商品保護ソリューションは、犯罪者と商品との間に「フリクション」を形成して、盗難抑止効果を高めることができます。これらのソリューションは、善意のお客様にも多少の抵抗感を与えてしまうかもしれませんが、店舗が安全とセキュリティを真剣に受け止めているのだ、と言うメッセージを伝えることができ、誠実なお客様はそうした店の意図をくみ取り、感謝してくれるでしょう。
キーポイント
小売犯罪と ORC の増加に伴い、小売業者はこれまで理不尽に耐え続けてきましたが、今こそコントロールを取り戻す時が来ました。
安心できる小売環境を形成することは、小売業者とスタッフの安全を確保する上で重要です。それを怠れば、利益とブランドの評判に傷が付きます。「対策の堅牢化」を図り、不審な行動者に対してフリクションを形成し、SMaaS や Computer Vision Analytics などのソリューションから入手したデータを活用して積極的な措置を取り、映像や RFID から入手した商品レベルのデータを使用して、法執行機関がより効果的に事件の証拠を作成できるよう協力することができます。また小売業者は、盗難を防止し、お客様の安全を確保するために、投資をしてきた店であるということをお客様に知らせることができます。
世界中で万引きと ORC が横行する背景と、それに応じて適切に損失防止対策を強化するための戦略については、当社の最新のホワイトペーパー、「パンデミック後の世界の小売安全対策」をご覧ください。