これまでも損失防止対策は重要とされてきましたが、ここ数年で、小売業者を常時悩ませる課題として発展し、現在この問題は重役会議でも取り上げられるようになりました。盗難、 店内暴力、小売店を狙った組織犯罪 （ORC）は、増加の一途をたどっており、小売業者は破滅的な問題への対処を迫られています。

全米小売協会  の最新のデータによると、2021年に米国の小売業者が被った盗難の総被害金額は ＄940憶に上りました。これは、2020年を＄40億ドル上回る水準です。その他の地域でも、欧州 から オーストラリアまで、同様の報告が寄せられています。

小売業者がこのような不利な環境で成功し続けるためには、損失防止対策を万全にしておくことが重要です。損失を軽減し、最小限に削減する方法は、最新の技術と戦術をどれほどうまく展開し、実行できるか、犯罪行為をどれほど効果的に阻止できるか、次の攻撃がどこで発生するかをどれほど的確に予想できるかなど、数多くの要因に依存します。このような前例のない時代において商品を保護するためには、あらゆる種類の戦術を講じ、スタッフと買物客の安全を確保することが不可欠です。

まず私たちはコロナ感染を経験しました。ロックダウンや産業特有のその他の混乱により、失業者が増加する中で、小売業者は 犯罪の急激な増加を見ました。

しかし、コロナ感染が終息した後も、不正による損失は、なぜか依然として高い水準で推移し続けました。それに続く インフレ高騰 によってもまた、世界中で小売店を狙った盗難が増加する原因となっています。「なくてはならないもの」として幅広く導入されたセルフレジなどの便利な設備もまた、多数の小売店に損失の機会をもたらし、不正による損失の被害額をさらに増大させる原因となっています。

「すべての市場の小売業者が、何らかの形でセルフレジを導入しなければならないことを知っています。しかし多くの場合、こうした導入は急ピッチで行われます」と、Sensormatic Solutions の Video Analytics, AI, & Incubation General Manager の Dustin Ares は述べています。「慎重な計画を立てたり、セルフレジの複雑な性質に真に対処しなければ、店内で不誠実な行動を奨励する要素を作ってしまうことになります。」

同時に、多くの国の法律では、万引きに対する規制が 緩和されています。これは、ここ数年で見られ始めている傾向ですが、その影響は盗難が多発する現在の小売環境でより敏感に感じ取ることができます。

「出来心の犯罪や ORC グループは、責任追及を受けないことを知っているため、犯罪が減ることはありません」と、Sensormatic Solutions の Account Executive の Mathew Meade は言っています。「彼らは起訴されないことを知っており、盗難によって得られる利益は大きい。」

しかもこれはすべて、予算が切り詰められ、店舗とスタッフが限られたリソースで、より多くのことに対処しなければならない状況で生じています。

実に多くの課題に直面しながら、小売業者は損失防止プログラムから確実な効果が得られていることを保証する必要があります。大手小売業者の大半は、電子式商品監視 (EAS) システムを長年にわたり使用していますが、その多くはシステムの効果を継続的に確認していません。これらのシステムは、非常に貴重な視覚的抑止効果を提供し、潜在的な犯罪者にフリクションとリスクを提供します。また損失分析プラットフォームと統合することで、より高い付加価値をもたらします。EAS システムをさらに最適化するために、金属箔やジャマー検出などの技術の導入を検討することができます。EAS システムは、金属箔の施されたブースターバッグや、ジャマーなどの犯罪ツールが店内に持ち込まれた場合に、それを認識し、アラートを発するよう設定することができ、潜在的なトラブルが起こる前に警告を発します。

対策の堅牢化

従業員の安全を保護し、不正による損失をさらに削減するために、小売業者はどのようなことに着目したらよいでしょうか？すべては、コントロールを取り戻すことから始まります。万引き犯はここ数年にわたり小売業者を理不尽な立場に置いてきました。そのため犯罪の機会を奨励する自己充足的な環境が形成されています。貴社が万引きをどれほど深刻に受け止めているかを示すために、Public View Monitors などの明白な視覚的サインを通路、セルフレジ、出口など、盗難に遭いやすい領域に戦略的に設置することができます。Meade が推奨するもう一つの戦略として、「対策の堅牢化」があります。

「対策を堅牢化することは、商品と潜在的な犯罪者との間に、より多くの障害を作ることを意味します」と、彼は述べています。小売業者にとって、ロック付きのケースなど、従来の方法を取り入れることが既定の選択とされてきました。しかし、これでは売上が損なわれ、顧客体験に影響を及ぼします。しかし、ハードタグ, セーファーとラップ, ラベルと、完全接続型の EAS 検出システムを使うことにより、よりスマートな方法で、顧客体験や売上に影響を与えることなく、これを行うことができます。この方法では、顧客体験を損なうことなく、犯罪を抑止することができ、なおかつ損失イベントに関する貴重なデータを提供してくれます。」

実証された方法を最新の技術と組み合わせて応用し、善意のお客様に不自由を与えることなく、犯罪者を抑止することができます。この最後のポイントは特に重要で、損失防止対策は、体験に基づくカスタム化という新たな時代に向かいつつあると言えるでしょう。

「今後考えられるのは、 Computer Visionや店内に設置されたその他のセンサーを顧客ロイヤルティデータと連動させて、買物客のタイプや、小売店との過去の関係に基づき、「フリクション（抵抗感）を与える」か「フリクション（抵抗感）を与えない」かを識別することです、と Ares は述べています。「得意客や、頻繁に店を訪れる来店客は、いわば高い「信頼」を獲得します。その信頼の代償として、チェックアウトプロセスでのフリクションを少なくし、セルフ・チェックアウトや、モバイル・チェックアウトを使用することもできます。」

損失イベントに関する重要なインサイト

今後も EAS システムは、損失を軽減し、商品を保護するために役立つ、重要な最前線の防御策となることは間違いありません。しかし、損失分析プラットフォームと統合することで、損失イベントのデータを使って、防御措置を講じられるようになります。 盗難パターンや時間と場所に関するインサイトはもちろん、次の ORC イベントがいつ発生するかまでも予測することができます。また、RFID テクノロジーを損失防止ソリューションに組み込むことで、「損失の見える化」を実現できます。 このテクノロジーは、アイテムレベルの情報から、不正による損失や ORC の活動の特質を明らかにし、内外の損失イベントを大幅に軽減し、各盗難イベントの正確な時間、場所、被害に遭った商品と価値を提供することもできます。この重要なデータは、法執行機関が ORC を追跡し、起訴に至るまでの過程で、一連の証拠を確立するために役立てることができます。

環境を安全かつセキュアに保つことは、損失防止対策専門チームの最優先事項です。Computer Vision テクノロジーによる犯罪者に特有の活動と行動の監視は、この取り組みにおけるゲームチェンジャーとなるものです。 Computer Vision テクノロジーは、既存のカメラインフラを使って、シェルフスウィープ、犯罪ツール、不審な集団や犯罪組織の来店、徘徊、および高額アイテムとのやりとりなど、不審な行動や潜在的な犯罪行為に関するインサイトとリアルタイムの通知を提供します。このような「監視の目」を拡充することでは、現在私たちが置かれている新しい小売環境で重要な役割を果たします。

いつでも、確実に商品を保護する

小売業のスタッフはパンク寸前の状態です。そんな中で、彼らが損失を防止し、なおかつより優れた接客ができるようにする手段を提供してあげることはできないでしょうか。時間の制限を解いてあげることで、最も大きなインパクトが得られるかもしれません。スタッフは、少ないリソースで、より多くのことを行う必要があります。それならば、作業効率を向上し、少ない時間で生産性を高めることはできないでしょうか？

時間を節約するための方法の1つは、ソースタギングプログラムを導入することです。これは、商品を製造元でタグ付けするというシンプルなもので、商品は整合的にタグ付けされ、販売フロアで即販売可能な状態で納品されます。スタッフは商品にタグを装着する作業に費やしていた時間を、販売フロアや、危険な行動を監視することに充てることができます。

盗難や ORC の増大から、店内暴力の増加まで、小売業者の未来には課題がいっぱいであることは否定できない事実です。一方、現在はこれまでにはなかった、最先端のデータ主導型のアプローチで、不正による損失を軽減できる ツールやリソースがあります。実証された店内抑止対策に、最新のテクノロジーと新たな工夫を加えて、損失防止プログラムを強化することで、あなたの地域の盗難の傾向にかかわらず、収益、製品、人々を守ることができます。